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研究室について
震災復興のためのボランティア活動や慈善団体への募金のように、自身の利益よりも他者の利益を優先する行動を向社会行動と呼びます。ヒトは他の動物に比べて極めて高い向社会性を示します。なぜヒトの向社会性は高いのでしょうか。ヒトは生まれながらにして向社会性の高い存在なのでしょうか。それとも生まれた直後は利己的な性質を持ち、社会生活を送る過程で向社会性を身につけていくのでしょうか。高岸研究室では、そのような問題に対して経済ゲームを用いた行動実験、ホルモン解析、MRI解析、遺伝子解析といった様々なアプローチ法を組み合わせ、子どもから成人までの参加者を対象とすることでヒトの向社会性の本性に迫ります。 また、ヒトの向社会性の本性を理解する上で重要なのは、その共通性と多様性です。社会神経科学はヒトの社会性における脳、ホルモン、遺伝子の働きなどの生物学的な基盤をこれまで明らかにしてきましたが、主に向社会性の共通性に焦点が当てられてきました。しかし、ヒトが示す向社会性は多様であり、背後にあるプロセスには個人差が強くみられることが示されています。私たちは向社会性の多様性はどのように形成されていくのかという問題を生物学的な視点から議論し、社会環境との相互作用の中で向社会性の多様性が形成されていく生物学的なメカニズムを解明することを目指しています。 |
大学院生の指導について
2024年度は3名の大学院生が在籍しています。修士課程の2年間は主に経済ゲームを用いた社会心理学実験や、oTreeを用いたオンライン実験などを通じて行動実験の手法を学びます。加えて、遺伝子解析とホルモン解析のうちの一つの手法も学び、行動実験と組み合わせることで修士論文を作成します。これまで指導してきた大学院生は、修士課程の2年間で遺伝子多型の解析手法や唾液からのホルモン測定の手法を学び、行動実験と組みわせた研究を修士論文として提出してきました。博士課程の3年間ではMRIの解析技術について学びます。修士課程で培ってきた行動実験の技術をベースとして、行動の背後にある神経メカニズムを明らかにする研究を行います。それらをまとめて博士論文として提出します。 高岸研究室では、社会心理学の分野にとどまらず神経科学や他の生命科学分野の研究者と同じ土俵で議論することができ、分野のリーダーとして活躍できるような人材の育成を目指しています。高岸研究室では、ヒトの向社会性の生物学的な基盤を明らかにする研究を希望する大学院生を募集しています(玉川大学大学院脳科学研究科修士課程・博士課程)。また、日本学術振興会特別研究員(PD)の受け入れも行っていますのでご興味のある方は高岸までご連絡ください。 <大学院生の受賞> |
研究テーマについて
最近の研究の関心は、マルチモーダルMRIを用いた向社会行動を支える脳の微細構造を解明すること [link]、向社会性の個人差が社会環境との相互作用により形成されていく過程をエピジェネティクスの観点から説明することです。大学院生が向社会性というキーワードの下でそれぞれ独自のテーマに基づいて研究を進めています。 ・オキシトシン受容体遺伝子多型と信頼についての研究成果 [pdf] ・唾液中オキシトシンと信頼についての研究成果 [pdf] |
研究室のロゴについて
向社会性を支えるオキシトシン受容体遺伝子(OXTR)のDNA配列を脳のイメージに合わせることで高岸研究室の特徴である向社会性×脳×遺伝子を表現しています。今後の研究の展開によりオキシトシン受容体遺伝子ではなく他の遺伝子のDNA配列に変化するかもしれません。 |
実験設備について
2022年1月にオープンしたHuman Brain Science Hallにある実験施設を使って研究を進めています。
Human Brain Science HallにはMRI装置、社会心理実験室、生理学実験室、視線計測室、生化学解析室などのヒト研究に必要な実験室がすべて揃っています。
MRI装置×社会心理実験室、生化学解析室×社会心理実験室といったように実験室の組み合わせにより様々な角度からヒトの社会性を研究することができます。 ・社会心理学実験室(Human Brain Science Hall 3F) ・生化学解析室(Human Brain Science Hall 2F) ・MRI装置(SIEMENS社製Prisma 3T, Human Brain Science Hall 1F) ・MRI Simulator(Psychology Software Tools, , Human Brain Science Hall 1F) ・眼球運動測定機器(Tobii社製アイトラッカー TX-300、EyeLink 1000) |